25%削減目標 米中動かす戦略も大事毎日新聞社社説
「2020年までに90年比25%削減をめざす」。民主党の鳩山由紀夫代表が環境問題のシンポジウムで日本の温室効果ガス削減の中期目標について明言した。
この数値は、民主党がマニフェストに掲げた政権公約である。今年6月に麻生太郎首相が表明した政府目標より野心的で、政権交代を象徴する政策転換のひとつだ。
年末には京都議定書以降(ポスト京都)の枠組みを決める国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を控えている。22日にはニューヨークで国連気候変動ハイレベル会合が開かれ、鳩山代表や米国のオバマ大統領も出席する。日本が温暖化問題に積極的に取り組む意思を示し、国際交渉にはずみをつけることは大切だ。
一方で、日本だけが高い目標を設定しても地球規模の温暖化防止が実現できないことも確かだ。講演で鳩山代表は、日本の国際社会への約束の前提として、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意」を挙げた。
世界最大の排出国である米国と中国はもちろん、インド、ブラジルなどの新興国も削減しない限り、気候の安定化は望めない。日本の積極的姿勢を全員参加の呼び水にできるよう、民主党は策を練ってほしい。
鳩山代表が「25%減」を明言したことに対し、産業界の一部は生産拠点を海外に移さざるをえないといった懸念を表明している。失業率が増えるなど国民の負担が非常に大きくなると指摘する声もある。
実際には、政府が掲げてきた「2005年比15%減(90年比8%減)」と「90年比25%減」とは単純比較できない。政府の目標は国内での削減分(いわゆる「真水」)を示したものだが、民主党の数値には海外での削減分や排出権のやりとりなどが含まれているとみられるからだ。
それでも、「25%減」は容易に達成できる目標ではなく、国民の覚悟が必要だ。民主党は、達成手段として、省エネ、再生可能エネルギーの推進、炭素回収・貯留技術の開発などに加え、これまで政府が避けてきた国内排出量取引や環境税の導入も挙げている。
こうした政策をどう進めていくかはこれからだが、具体策や国民の負担についてよく説明し、国民が納得して協力できるようにしてほしい。
これまでの政府の対応には、日本の未来社会をどういうものにするのかのビジョンが欠けていた。民主党は低炭素社会のビジョンを示すことが肝心だ。それを国民が共有することによって、「25%減」のコストを、未来への投資と受け止めることができるのだ。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090909k0000m070111000c.html